コレステロールには、もともと善玉、悪玉があるわけ
ではありません。コレステロールは、食べたものの脂
から肝臓で作られますが、作るのは体に必要だから
で、いろいろなホルモンの原料として作られます。も
ともと善悪があるわけではありません。それを血管を
通して全身の組織に運んでいくわけですけれども、そ
のための乗り物が必要です。コレステロールは脂で
すから、血液(水)の中を運んで行くためには、水と
脂は溶け合いませんので、石鹸膜のようなものに包
んで運んでいくわけです。その乗り物をリポタンパク
といいます。肝臓で作ったコレステロールを血管壁な
どいろんな組織に運ぶ乗り物がLDL(低比重リポタ
ンパク)です。逆に組織で余ってくるコレステロール
は、捨てにいかなければいけません。処理していく
ための乗り物、それがHDL(高比重リポタンパク)と
いう粒子です。食事性の脂が多くて、作られるコレス
テロールが多い人にとっては、それを血管壁などの
組織に運ぶLDLというのは、動脈硬化を進める方向
になりますので、悪玉という言い方をされます。逆に
、組織で余った脂を捨てにいくためのHDLは、善玉と
いう言い方になっています。それは、基本的な善悪
というよりも乗り物の違い、運ぶ方向の違いです。戦
後の日本のように摂取する脂が少なかったときには
、肝臓からどんどん運んでくれるLDLこそ善玉であり
、せっかく作ったものを捨てにいってしまうHDLは、む
しろ悪玉だったはずです。そういう意味で、善玉、悪
玉という言い方は、動脈硬化の立場からの見方で、
コレステロール全体の働きからみると、必ずしもそ
ぐわないと思います。
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